ガラスの精進/ただのみきや
アンテナの上
カラスがめずらしく寒そうだ
度を越した愛撫
風だけがご満悦
抗いながらも抗えず
樹々もさんざん掻き毟られる
その有り様を見て見ぬふり
家々の窓はぬらっと景色を滑らせる
――カラスが屋根から千切れ飛んだ
「もうどうだっていいや 」
ガラスのこちらではガムランが
雨漏りみたいに続いている
*
小さな文字で手紙を書きました
あのモンシロチョウを捕まえて下さい
一年の中で
恋人みたいに寄り添ってくれるのは二人
初夏は初恋
初秋は別れの予感
あとの女神は冷酷無口か
陽気な鼻歌で生死を着飾るばかり
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