夜更けに/こたきひろし
夜更けには
私からもう一人の私が抜け出して
アパートの部屋から出て行く
すっかり暗くなって
静寂に飲み込まれた市街へと
彷徨い始めた
まるで夢遊病患者さんだ
コンビニの明かりが見えた
もう一人の私はおにぎりとお茶が飲みたくなって
コンビニに入った
手に取って持ったまでは良かったが
財布が見当たらない
あっ?
置き去りにして来たもう一人の私が
部屋に脱ぎ散らかした
ズボンのポケットの中だ
もう一人の私は
手に持ったおにぎりとお茶を棚に戻すと
慌てて
もう一人の眠ってるアパートの部屋に
駆け足で戻った
戻る 編 削 Point(3)