ポケットハンド/イオン
 
詩人は黒ジャンパーに
ポケットハンドで
凍てつく街を歩いている
転んで手をつくよりも
言葉を書き留める
指先を温めている
ごめん違った
自動販売機で立ち止る
コインを入れるために
指先を温めていた

詩人は街を眺めている
ポケットハンドの右手で
缶コーヒーを握ったまま
ポケットの中で
拳銃を持っているようで
心の引き金で世間を撃ち抜く
言葉との出会いを狙っている
ごめん違った
左手に持ち替えた
カイロ代わりにしていた

詩人は降り出した雪に
ポケットハンドで
背中を丸めて歩き出した
滑っても転んでも
つかまるものはない人生
頭を打って星でも見るさと
気取って駅へと向かう
ごめん違った
気取って見えた足元は
しっかり長靴を履いていた
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