すべては/道草次郎
 
色々な人がいて、驚くことに中学の時の同窓生もいました。その人はぼくの本名が比較的珍しいこともあり、自己紹介の時にピンと来たようで話しかけてくれたのです。その人はかつて推しも押されぬ陸上選手だったのですが、過日の面影はすでに無く、ビックリするほど髪の毛が白くなっていました。きっとぼくの方だって相手からはそう見られているのだと思い、なんだか時の流れが恐ろしくなりました。

すべては過ぎてゆきます。

優しくしてくれる人もいました。その人が朴訥にプロ野球の話などをしてくれたりするのを聞くのをぼくは好きでした。その人から飴を貰った日は、河原に咲くスイセンの花もどことなくいつもより美しく見えたもので
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