未詩集2/道草次郎
こうして
春はくりかえされる
身代金の代わりに
ヒバリを欲しがるのは
それは
春の仕業だろう
「プチん」
張り詰めた糸が
プチんと切れるような音がした
どうやら落ちたらしい
一匹の野良犬がやって来て
口をはふはふさせて
それを食ってしまった
ぼんやりと世界を見渡す
なるほど
まだ誰も気付いていないようだ
どうしようか
このまま黙っていようか
黙ってたって
別に大して変わりはすまい
「ハナニラはうつくしい」
ハナニラはうつくしい
ハナニラはちっともそれを知らない
ハナニラは軽そうだ
ハナニラは軽そうに生きるひとのようだ
ハナニラは哀しい
ハナニラはちっともそれに気付かない
ハナニラは光っている
ハナニラは光をまとい生きるひとのようだ
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