常にこめかみにあてられた銃口が囁いている/ホロウ・シカエルボク
 
たように数人の酔っ払いが通り過ぎる、彼らは時間を無駄にする天才だ、もう一度仰向けになる、俺を喰らおうとしているのはおそらくいつだって俺自身だ、そうでないとすべての辻褄が合わない、俺の心中には鬼が住んでいて、そいつが俺の魂を喰らおうと機を窺っている、多重人格者のホストが奪われるみたいに俺と取って変わろうとしているのだ、もしかしたらそいつと入れ替わったところで人生には何の支障もないかもしれない、けれどそうなったらもう二度と俺は天井を眺めることはなくなるだろう、深く暗い湿気た場所で今度は俺が鬼となって、俺を奪い返す時を待ちわびるのかもしれない、そのとき俺が考えることは何だろうか?それはもしかしたら棺の中で思うことと同じなのかもしれない、死とはなんだ、思えばこれほど曖昧なものもない、そいつは生きてる人間には実感出来ないものだから…だからこそその瞬間を追い求めるのだろう、俺のように真夜中に、たったひとりであれがこうだこれがそうだと声もなく喚き立てる人間にとっては、それはこの上なく胸躍る裏切りであり成就なのさ。

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