「言わなかったボタン」/道草次郎
ちなみに、お察しの通りこのメッセージは通常の段取りを経て送信されたので、その限りではない。ゆえにどこまでも平凡に虚空をさまよい、やがてはどこかの知的生命体の目にとまることだろう。宇宙と時間の無窮の拡がりは、その可能性を否定するどころか指示すらしているのだ。
「言わなかったボタン」だけが、ある意味では最後の砦なのだとも言える。
じつは、このメッセージを書いている最中にも言わなかったボタンは何度か押された。ポケットにそれをしのばせ、いつでも押せるように持ち歩いているのだ。
わたしは、自分が何に対して何を行なっているのか、それを上手く言い表すことができない。
しかしながら、漠然と
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