ほころんでもほどけない蕾のために/ただのみきや
ろにめくるめく
花という時間
花という炎
むすぼれほどけあっけなく
白くゆらめき中空へ
香りを放ち消えて行く
後にはささやかな灰
火葬はいい
*
ある時間は
蕾のまま落下する
刹那 水面に歪んだそれが
虚像であるのなら
訪れた実体は
自らの死ではなかったか
生は
死の訪れにより儚く消え
以降
その死だけが永続する
存在とは虚
非在こそ実
落下した蕾が
鏡に飲まれて沈む時
虚と実は
対消滅する
後には非在のみ
存在しない時間
存在しない蕾
存在しない夢見る魂
《2021年4月4日》
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