ほころんでもほどけない蕾のために/ただのみきや
 
わたしたちの研究対象は
絶えず対照的対称性にあった

  *

甲羅を花で飾られた亀は
光と影の境を歩いて行く
停止した時間の
空間にドレープを生じさせ
記憶からの香り
鏡へ顔を沈めた男

  *

この胸は海から空へ
釣り上げられて狂う魚
間延びした生と死
光を散らしながら
捧げるように求婚した
やがて静かなる固着
濁りを沈殿させた
モネの絵の上澄みのように

  *

並木の透視図法
黄砂に霞む日差しの向こう
猫は駱駝に変わる
天と地は血だまりの双生児

  *

春のようなものが
今落ち着きはらっている 
まるでそこに在るか
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