持たされた/こたきひろし
その日持たされた母親の骨壺が熱くてビックリした
斎場から葬儀屋のバスに乗って実家に向かう途中
最前列の席にすわりながらじっとその熱さを我慢しながら
骨壺を両手で持ちながら胸に抱えていた
五月初旬だった
気温はそれなりに上昇していた
熱い骨壺に私の体温も上昇したのは書くまでもなかった
喪服を着た私は汗を書いていた
幼年から少年
少年から青年
青年から中年
中年から老年
に至るまで
私の母親に対する思いは熱量を欠いていた
母親にこれと言って愛情を感じる子供ではなかったのだ
たとえ母親とその子供と言う関係だからと言って
お互いの間に愛情が存在するとは限らない
だからと言って
何度拭いても拭き取れない
近親憎悪が存在したという事もなかった
つまりどこまでも無関心な存在でしかなかったのだ
なので母親の死にこれと言って特別な感慨はなく
ただただ
胸に抱えた骨壺が熱いと感じているに過ぎなかった
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