春提灯と咳緋鯉/田中修子
 
、虹、踏みにじられる花びらは、砕かれゆく春の積乱欠片、遠目にゃうららな乱反射だェ。

 満ちて 満ちて 滴っている あ
 さんずい さんずい さんずいの嵐やなァ
 飲まれていく春の水底に尾っぽ

 あなたは私を見ない、私もまたあなたを見ない、見ない見ないの枝が幾重にも交差して奥にいる鳥を隠すんだ。舌を絡ませあい喉の奥を愛撫し、脳を貫きあいたくッて、ね。
 乱れていいよ。

 呼吸がしづらい、熱い、肺がゼイゼイなっている。
 ひとの奥底には箱があるんだよ、光るくだのそこにあるんだ。その箱ね、あけられるんだけど、あけたほうもあけられたほうも壊れてしまうんだ。
 パンドラ?
 そう、そんなもの。きみ、もう、いっかい、壊れてるのに。
 最後に残ったのは希望だったけどそれももう捨てて、別のモン欲しい、ひとりではこの世にいられないし。あっはは、はは、いっくらいっくら持ってるよって言われたって--ないもんはない。
 
 からだを折りながら男たちに花冠を編んで投げていたことを私はさっき知ったのでした。
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