未詩集1/道草次郎
 

匂いがする
つむじ風が起こり
オオイヌノフグリも
小刻みにぷるぷると震える
どこかとおくと
こここの胸に
二つの
波がうねりださんとする時
どうしてか
心は
いつもおちついている


「そらは」

こころはふるえる
とうめいにはなれない
のぎくのようにはなれない
しおれたはなをみて
とめどなくあふれてしまう
おろかにも
このこころはふためく
そらがいたいという
そらは
じぶんがはれていることをしらない
わたくしもだ


「雑貨屋の店先で」

ひきのばされれば
何だってすきまができてしまう
そこに沈められるもののことを
あるいは悲哀とするならば
さくら貝などは一体どうしたものだろう
しばしあごを支えて上目遣い
だってこんなにうつくしく
人の気持ちを素敵にさせるものは
そうはあんまり無い
あれはやっぱりあのままがいい
春海の舌で
うっそりと濡れているのがいい
そう思い
さくら貝のペンダントを戻した
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