未詩集1/道草次郎
 
「にげる」

なにものからも逃げたものが
なに食わぬ顔でなにもしないでいる
すると
なにものをもにがしたものが現れて
なに食わぬ顔でいるものの所在を
不明瞭にしてしまう
なに食わぬ顔でいるものはおもう
なにものからも逃げたつもりでも
こうしてあやしくなる
ならば
なにものからももはや逃げることは能わない
何食わぬ顔でもいられない

ただなにかの状態というのが認められ
認めているだけでは済まされない
なにかがあり
意識の兆すところに遍く
離反して立つ同淵の顔がそぞろあるばかりだ

なんらかのなにかは
いつまでもそう口を閉ざしている
そういう話も

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