詩の日めくり 二〇一五年十三月一日─三十一日/田中宏輔
自体が、じっさいに存在するものではないのだ。紙に書かれた数字やワードに書き込まれた数字やエクセルに書き込まれた数字は、現実に存在する数を表現したものではないのだ。ぼくが指に挟んで紙に文字を書き込むペンのことをペンと呼べるもののようには。愛という言葉の意味は広くて深いが、愛という言葉が人間のこころに思い浮かばせる情景というものがある。愛が表象として実感されうるものであるからだ。そういう意味で、愛というものは存在している。しかし、数は表象として人間のこころに実感されうるものだろうか。プラスチックでできた数字をかたどったものがあるとしよう。そういうものがテーブルのうえに置かれたとする。絵のなかに描かれた
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