うっとり鬱で/
ひだかたけし
また一夜が明け
光溢れる一日が来たよ
風はそっと穏やかだし
空はぼうと水色だし
街は花の香に包まれて
実に飄々と軽やかに
ステップ踏んで春は行く
おれはのそっと鬱だけれど
六十一回目のこの三月を
なんとか息継ぎ生きている
そうか、たった六十一回目かと
半ば呆然と気付きながら
この薄紅色の大気のなかを
うっとり鬱で泳いでいく
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