夢の迷い路/朧月夜
雨が降り続きます。それは決して晴れない雨です。なぜなら、雨は心のなかに降っているのだから。昨日はバス停でバスを待つ傍ら、ああ、この人はきっと割り込んでくる。と、いう人がいました。案の定、彼はわたしの前に割り込んで、平気でバスに乗っていくのでした。晴れていました、窓の外は。いいえ、薄曇りであったのかもしれません。病院へ行く道すがら、わたしは窓の外を見るでもなく、鞄に入れておいた本を読むのでもなく、ただ懐かしい思いに縋っていました。わたしを出し抜いた男など、どうでも良かったのです。ただ、過去の思い出と現在のなかに、沈潜している自分がいるのでした。道路脇には麦畑が並んでいました。いいえ、トウモロコシ畑
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