観光バス/末下りょう
 

ぼくを見捨てたもののためにぼくは死ねるだろうか


晴れた日の正午に
だれの記憶にも残らないやり口で


光のなかで明かりを消すように


永遠より午後の芝居を好むように夜は長くなり
首都が輝きだす

観光バスに揺られ
二つの電波塔からパノラマを眺めて
定番の土産をたった二箱
買って帰る
見捨てられた郊外まで


だれもが知る街の名ばかりを口にするぼくは


口をひらいたぼくは
死体より冷たい

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