今日からは道の駅には寄らない/山人
まだ先のある若者と、もう先が見えている年配の男性が同じ斜面にチャレンジしている様は、何かとても新鮮で微笑ましく見えた。そこに、年配者男性の人生や若者の置かれている「今」は欠如し、ひとつの不整地斜面目掛け、そこを攻略することだけに意識が注がれているという事実だけがあった。新鮮で微笑ましいとともに、神的で、ある種の美しさをも浮き立たせていた。
暇な長い一日が終わり、社長と支配人の話があった。コロナ禍という事もあり、慰労会は実施されず、代わりに全従業員に一万円づつ一封された封筒を受け取り解散となった。重く暑苦しい、スキー場のウエアーを返却し、殻を脱ぎ捨てた気分だった。
朝、昨日までの残り香の
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