短歌雑詠/朧月夜
ほどけゆくリボンの落ち往く先にある、希望という名の広い花園。
ローズティー、浮かぶ花びらふるわせて。貴方は横向き、遠い目をする。
道端のキバナコスモスは無言で、ためらう様があなたに似ていた。
コンビニでブラックサンダー食べながら、午後の紅茶を飲む昼下がり。
新宿のサブナードに紅いドレス。目も醒めるほどに美しくて。
アメリカン・コーヒーを飲むドトールで、話し声さえしないひととき。
寒椿、咲く他人(ひと)の庭、ゆかしくて、わたしにはない心もちになる。
かじかんで握った手を、コートのポケットに入れてもパスケースしかなく。
フューチャーと発音するFにとまどう。ヒューゴーならば、よかったのかも。
本を買う。とても贅沢な気になる。夢がつまって。わたしにはなくて。
ひとしきり風が吹いたら、気まぐれで旅に出よう、と嘘をついてみる。
猫が鳴く。めいめいの声で鳴いていて、そのニュアンスをわたしは知らず。
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