つぶやかない(二)/たもつ
 

(午前7:30 ? 2021年3月5日?)


両親がいて
兄がいて
僕がいて
僕だけがいない
郊外にある壊れた
ファミレスの前を皆で通る
よくここで食事をしたね
不在の僕が
思い出を話すように話す
(午後3:46 ? 2021年3月7日?)


駐車場の隅にあった
湾の清掃をする
沖合では数隻の漁船が操業している
その間にも階段は増設され続け
繁栄の驕りは時として
爽やかな風を吹かせる
やがて駐車場は満車となり
湾は閉じる
(午前7:25 ? 2021年3月10日?)


舌の根が乾く
嘘はまだ温かい
路地に面した窓を開ける
安い油の臭いがする
あらかたの友人は
正確な声も忘れてしまった
今日一日を
何かに感謝して生きても
許されると思う
(午前6:55 ? 2021年3月12日?)



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