黒猫と少年(8)/嘉野千尋
 
き消えた人形は、
  オルゴールの上に移っていた。
  シルクハットにステッキを持ったタキシード姿の人形が、
  バレリーナの手を取っている。
  そのちぐはぐな様子に、黒猫は一瞬考え込むような顔をしたが、
  すぐに少年を見て小さく笑った。
 「これでいい」
  少年は得意げな様子で、片眉を上げて見せた。
  それからまた、当然三日月の晩も訪れたのだけれど、
  少年は窓から時々夜空を眺めるだけになった。
  そのかたわらでは、黒猫がホットミルクを飲んでいる。
  もちろん、花柄のブランケットにくるまりながら。 



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