黒猫と少年(8)/嘉野千尋
 
 
  *黒猫と少年


  黒猫のいなくなった部屋で、少年は揺り椅子に腰かけてぼんやりしていた。
  がたん、と二番目の窓が音を立てて、
  黒猫が顔を出した。
 「どこに行っていたの」
  身を起して尋ねた少年には答えず、
  黒猫は優雅な身のこなしでするりと部屋に入ってきた。
 「・・・だって、一人は寂しい」
  黒猫は右手に視線を落としたまま、悲しげな声で言った。
  少年が黒猫の視線を辿ると、
  そこにはシルクハットをかぶった人形らしきものがある。
 「・・・そうだね、一人は寂しい」
  少年は頷きながら、左手をひらりとさせた。
  黒猫の右手から掻き消
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