十年忌/
大村 浩一
誰も帰らない家が在った
十年ぶりに男が一人帰った
その家を壊す支度に
雑草に覆われ
壁は罅割れ色褪せ
繁栄の代償に
突然選ばれた家族
怒りは擦れ違う
日々が過ぎても
これで癒えたと言うのか
罅割れた建屋
溢れる汚染水
未だ揺れる度に慄く
プリピャチのように
まさかの日本に出来た
損なわれた場所
2021年3月11日初稿(完全版)
大村浩一
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