4月始まりのタイムマシン/妻咲邦香
長く短い人生、時には誰かを失望させる事も
永遠じゃないって気づいた時から
いつ捨ててもいい筈なのに
山の端を渡る雲みたいな始まり
予感が春一番と一緒に枯れ葉を巻き上げて
窓にコトコト音を立てる
落として割れたマグカップ
外れた取っ手を指でくるくる回しながら
ちょっとした傷だったら何度でも巻き戻せる
まるでパーソナルなタイムマシン
これから寝起きを共にするときめきと
今の気持ち忘れないための目盛りセットして
サビニャックの絵みたいに笑う
早く君に会いたい気もするし
全部嘘ならそれでいい
大事なこと確かめられた気がするから
もう愛でなくても大丈夫
いつでも戻って来るよ
4月始まりのタイムマシンで
ひとりきりの朝はしばらくお休み
どうせしがみつくならもっと大きなものでいい
後で言い訳出来るように
代わりに誰かが喜んでくれたら、それで全部チャラ
まだ捨てられないマグカップ
取っ手を指でくるくる回す
エンゲージリングは春の装い
カレンダーに見えない印つけたら
もう恋でなくても大丈夫
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