アルファベット奇譚/道草次郎
台所で支度をしていたら
アルファベットたちが
まな板の端っこを
ふらふらと歩いてきた
みんな
疲れきっているように見える
あ
誰かが落っこちた
また
落ちた
あ
あ
次から次へと落ちていく
最後に残ったのは
……
H
と
I
この2人だ
2人はまな板の真ん中にくると
肩を組んだ
(HI)
ぼくに手を降っているではないか
思わず
こちらも手を振り返してしまう
?やあ?
2人は慌てて
ちがうちがうという素振りをする
逆だ逆
と
(IH)
?
振り向くと
ガスコンロから火が上がっていた
!
FIREでいいのでは?
と思いつつも急いで
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)