黒豹/朧月夜
 
暗闇のなかにて、
わたしは黒豹だ。
黒豹でなくっても、
黒猫でも良かった。
それでも、わたしは黒豹で、
黒猫よりも?いと思っている。
大烏でも良い。
それでも、エドガー・アラン・ポーの、
大烏を一度も読み通したことがない。
黒豹は、黒猫よりも黒い。
なぜかそのように思っている。
黒豹は、恐ろしくも美しいから。
暗闇のなかでは、より黒く重々しく、
悲劇と悲哀をまとっている。
わたしは黒豹だ。
深い穴倉の底に落ちて、
そこで悲劇を夢見ている。
悲劇? それは不幸だったろうか。
わたしはその不幸の意味を知らない。
いままでが幸福だったのかも、わたしは知らない。

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