三面鏡に挟む春/
ただのみきや
そして永久に
わたしと目を合わすことはない
神がわたしの目を見ても
わたしの目に神が映らないように
雪解けの暗い水が映し出す
忘れてしまった名前を呼ぶ声
二階建ての伽藍洞を
無数の春が裸足で汚して行った
また水晶が溶けて行く
頬には囀りを
影には羽ばたきを
彼女は貝殻に熾火を隠す
歌声に湿った枯野で
わたしは唇を押しあてた
蛙のように冷たい
迷信は逆子を身ごもっている
真っ白い遺失物が
振り返るとどこまでも
《2021年3月6日》
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