三面鏡に挟む春/ただのみきや
 
猫はバンドネオン
彼女の腕に抱かれ
残像の融解と拮抗する
毛皮のレジスタンス


霧の池に耳を沈める
跳ねる魚
飛び立つ水鳥

昨夜の夢から浮かび上がる
白い死体
隠れた月が手繰り寄せる
水の囁き 
喃語に手足が生える

春 首を伸ばした亀
過ぎ去ったこと全て
夢の素材となる


太陽の残響 濁った景色

女の懐の匕首 見開いた沈黙


声には飛び去る翼がある
瞳はあがく術もなく溺れ
夜はその上で口を閉ざす

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長い あるいは刹那の breath


人生など読み解くものではない
何らかの運命 何らかの因果
隠された
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