三面鏡に挟む春/ただのみきや
猫はバンドネオン
彼女の腕に抱かれ
残像の融解と拮抗する
毛皮のレジスタンス
霧の池に耳を沈める
跳ねる魚
飛び立つ水鳥
昨夜の夢から浮かび上がる
白い死体
隠れた月が手繰り寄せる
水の囁き
喃語に手足が生える
春 首を伸ばした亀
過ぎ去ったこと全て
夢の素材となる
太陽の残響 濁った景色
女の懐の匕首 見開いた沈黙
声には飛び去る翼がある
瞳はあがく術もなく溺れ
夜はその上で口を閉ざす
頁をめくる
長い あるいは刹那の breath
人生など読み解くものではない
何らかの運命 何らかの因果
隠された
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)