誕生日のきみに/梅昆布茶
古代はひがないちにち風を吹かせて
日捲りはやがて春を忘れてしまうだろう
肩甲骨のあたりの憂いは上等な娯楽あるいは
ながれついた憎しみをも拭い去ってしまうのかもしれない
あの娘はときどき薄く引いた眉に化粧箱をとじこめて
海岸の無い街を歩くそして自分の影をさがしている
きみはどうしているかと何時も想うが
きみが誰だったのかいまだわからない気がするんだ
陽は翳ろうと世界が暗転しようと
無意味ならば言わないほうが良いのかもしれない
風がなくてもスーパーの幟は素敵に翻って
YAMADA電機の修理品は無事に戻ってきそうだ
またあたらしい或いは古楽が響くときにきみはいるのだろうか
またあたらしい猫をそして猫の餌を心配しなければならないのだろうか
新しい誕生日のきみに
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