思い出/青井
 
思い出は遠のくのでもなく

色褪せるのでもなく

失われるのでもなく

ただ軽やかになっていくのだ

綿毛のようにフワフワと

この世界を風に乗って飛び回り

ふとした拍子に舞い降りて

鮮やかな印象だけを残して

花の香りみたいに通り過ぎる

だからといって無くなるわけでもない

僕の手元からは飛び去ってしまっても

この世界のどこかに今も宿っている

そうしてまた気まぐれに姿を見せるのだ

懐かしさや悲しさを羽織って

颯爽と飄々と

しなやかに
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