詩の日めくり 二〇一五年九月一日─三十一日/田中宏輔
なよ、兄弟、自分の茂みを見つけるんだ」(ナボコフ『森の精』沼野充義訳)を読んで思いついたもの。まあ、ふだんから思っていることを、ナボコフの言葉をヒントにして言葉にしてみただけだけど。まだ短篇、ひとつ目。十分に読み応えがある。
世界とは、別々のところに咲いた、ただ一つの花である。
これは、「もはや、樹から花が落ちることもない、」(ナボコフ『言葉』秋草俊一郎訳)を目にして、「花はない。」を前につけて、全行引用詩に使えるなと思ったあとで、ふと思いついた言葉。ちょっとすわりがわるいけれど、まあ、そんなにわるい言葉じゃないかな。
「その湿り気のある甘美な香りは、私が人生で味わったすべての
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