詩の日めくり 二〇一五年九月一日─三十一日/田中宏輔
 
かしたら、相手にとっては事実ではないことかもしれないけれど。しかし、言葉にすることで、ぼくは、姿を、態度を、声を、言葉を所有したような気がしたのだ。『高野川』がはじめて書いた詩だと言っている。事実は違っていて、中学の卒業文集に書いた『カサのなか』がはじめて書いたもので、のちにユリイカの1990年の6月号の投稿欄に掲載されたのだが、詩という意識はなく書いたものであった。自分が意識して詩を書いたものとしては、ユリイカの1989年8月号の投稿欄に掲載された『高野川』がはじめてのものであった。この『高野川』は事実だけを書いた。ぼくの初期の詩は、いまでも大部分そうだが、事実のコラージュによってつくったものが
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