詩の日めくり 二〇一五年九月一日─三十一日/田中宏輔
になって、不眠症にかかり、鬱状態になってはじめて、SF小説のカヴァーの美しさに気がついた。そこで、手に入るものはすべて手に入れた。ようやくここで、本を所有する喜びにはじめて遭遇したのだった。おそらく、それは病的なまでのものであったのだろう。古書のSFの場合、カヴァーのよい状態のものを手に入れるために、同じ本を5冊買ったりもしたのだった。きのう買ったジーン・ウルフの新刊本にクリアファイルでカヴァーをつくるときに、表紙の角を傷つけてしまって、しゅんとなったのだが、むかしなら新しく買い直したかもしれない。でも、少し変わったのだろう。あきらめのような気持ちが生じていたのだ。表紙は本を所有することの喜びの小
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