詩の日めくり 二〇一五年九月一日─三十一日/田中宏輔
女の死体は音を立てて皿のうえに落ちた。アイスペールのなかの氷を一つアイストングでつかみ取り、氷を彼女の死体におしあてた。うつ伏せの彼女の肩から背中に、背中から腰に、腰から尻に、尻から太もも、脹脛、踵へとすべらせると、アイストングの背で彼女の死体を仰向けにして、氷を、彼女の顔から肩に、肩から胸に、胸から腹部に、腹部から股に、股から太もも、膝、膝、足首へとすべらせた。彼女の死体のうえでゆっくりと氷が溶けていく。彼女の死体のうえを何度も何度も氷がすべる。小さくなった氷をアイスペールに戻して、彼女の死体にナプキンの先をあてて水気をとっていく。皿に零れ落ちた水もナプキンの先で吸い取る。さあ、食事だ。クレーヴ
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