詩の日めくり 二〇一五年九月一日─三十一日/田中宏輔
 
には無数の段階、推移形式が存在するのであります。」云々、延々とつづくのである。ヴァレリーのこの追求癖がぼくは大好きなんだけどね。「散文を歩行に、詩を舞踏に」たとえたのが、ほんとうはマレルブが最初なのに、ヴァレリーが最初に述べたかのように多くのひとが誤解しているのも、このヴァレリーのすさまじい分析的知性のせいなのだろうけれど、このような誤解というのも、あまりめずらしいことではないのかもしれない。だって、リンカーンの言葉とされるあの有名な「government of the people, by the people, for the people 人民の、人民による、人民のための政治」っていうのも、
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