詩の日めくり 二〇一五年九月一日─三十一日/田中宏輔
 
歩き方の様相がいかなるものであったとしても、ただその結果だけしか残りませぬ。マレルブの言った跛者にせよ痛風患者にせよ、向って行った椅子に一度びどうやら辿り着きさえすれば、敏活軽快な足取りでその席に辿り着いたこの上なく敏活な男とでも、着席していることには何の変りもないのであります。散文の使用にあってもこれとまったく同じです。今私の用いたところの言語、私の意図、私の欲求、私の命令、私の意見、私の問い或いは私の答えを表現し終えた言語、己が職責を果したこの言語は、到達するや否や消滅します。私は自分の言辞がもはや存在せぬというこの顕著な事実によって、自分が理解されたということを識るでありましょう。言辞はその
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