春に賦す/Giovanni
 
家を出て 当てもなしに歩いた
道を渡り 林を抜けただ独りで

ふるさとを 遠く離れて来てしまった
戻ろうにも 路半ばを過ぎてしまった

柔らかな陽光は悴んだ掌を宥めた
のどかな南風は凍った涙を温めた

相変わらず ふらふらと 歩いているが
妙に 心穏やかなのは きっと 春のせい










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