あとは 念力で/ただのみきや
 
の女よ 何故そこに






呼応

音楽は美しく白目をむいた
南の古い裸の歌声が
吹雪の中でからだを得る

ペン先のインクの滴り
黙した夢の入り口

降り積む雪は時そのもの
隠蔽し 忘却を誘い
刷新を嘯くが
無念の凍死体は白紙の底に沈められたまま

雀みたいにふくらんで
寄り添う二羽の鴉
夜の落とし子 双子の黒子
雪に埋もれた何かを探るように

巫女の舞踏が静かに漲る頃
夜は血のように滴った
汚すのだ 美しく
白紙に埋もれた凍死体は
新たな七つの姿態を演じる

わたしの夜よ
いつまでも他人の如く侵食しろ
せめぎ合う悲劇と喜劇の渦中へ
潜水艦よ浮上せよ






付き合いの悪い月

月は爛々として
わたしの瞳の鏡を覗いている
ゆっくりと暗転する一日が
グラスの琥珀に溶けてゆく
溶けないものが残る頃
瞳は爛々 もう とっくに
月は窓から逃げ出している


        
                 《2021年2月28日》








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