黒猫と少年(7)/嘉野千尋
 
けたが、
  途中でふと気がかわったのか、そのままびりびりと破り始めた。
  読み返すことなく破り去った手紙を、少年は空中にまき散らす。
  すると紙片は、白い蝶へと姿をかえ、
  少年の周りをひらりひらりと舞い始めた。
  蝶の白い翅に、黒インクの文字が模様として浮かんでいる。
  自分の周りから離れようとしない蝶の一匹を捕まえて、
  少年はさっと左手を閃かせた。
  蝶の白い翅は、鮮やかな青へとかわり、
  しばらく部屋の中を飛んでいたが、
  最後に黒猫のブランケットの上で翅を休めた。
 「おや」
  少年はもう一度溜息をついてから、
  黒猫のためのミルクを用意した。



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