善良なる定義に関して/ただのおと
 
定義が転がっていく、上へ上へと。私たちはだから、全員で、その定義を責めなければならないと思った。なぜだろうみな共通して、定義がとんでもない罪を犯しているような気がしてしまったのである。だからといって、私たちがそのためにとりたてて互いに欠陥を主張し合い、補い合おうとする必要はなかった。私たちは必ず、先天性の欠陥をもっているのだから、あるいは先天性の欠陥をもっていなければ私たちではないのだから。あるいは、一つの欠陥をもたないことが、すでに私たちにとって欠陥であるのだから、私たちでない者など、もはやここには存在しえなかったのである。定義の更生のためにみな協力しようなどといって、わざとらしく手をつないだり
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