自殺衝動/にょすけ
【この道が地獄であれと願った】
この道が、このまま進んだ先に地獄であれと
そう願った。願わずにはいられなかったのは
わたしの右ポケットにあるたった一つの飴の
包み紙が、くしゃくしゃと潰れながらまるで
きみとホテルを出たあとのゴミ箱みたいだっ
たからだ。なんてことは無い笑顔で、おなか
が空いたなんていうきみの。右側だけ釣り上
がった口元が、心底愛しくて。何度もその唇
を、冬の空の寒さを理由に奪ってやりたいと
そう願ったことだろう。街が次第に色づき、
もういっぱいの人がこの景色の中を動き始め
ホームのひんやりとしたベンチにこしかけな
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