出世したい来世/入間しゅか
なお広がっていった。ぼくは黙って見ていた。先生がヒステリックな怒鳴り声をあげた。ぼくを立たせると、大きく振りかぶっって顔面に平手打ちをした。その時、ぼくは始まったんだ。牛乳まみれの床に倒れたぼくが何も言わなかったのは、緘黙症だったからじゃない。先生が正しかったからだ。この成績では公立は望めませんと言った中学の先生。君はせいぜいなれても引きこもりだよと言った高校の先生。あなた方は常に正しかった。
正しかった。正しかったとしたら、
来世はまだですか
鯵のひらきはまだですか
出世はどこですか
悟りは開けませんでした
来世はまだですか
箸を上手に持てない醜男ですが
早う猫を飼いたいでござる
来世はまだですか
朝焼けが正しすぎて眩しい
痛い。
いたいけど、いたいから、
来世はまだだけど、
これからもよろしくお願いしまする。
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