点火/
すいせい
さに夜着をはためかせながら
死者を包む毛布の
毛羽立ちを
剥ぎ取られた湿ったブーツの
強張りを
落下する前に
巻き戻すことの出来ぬ不幸を
言葉は多く費やされてしまった、脆弱な詩語を死体に変えて私の掌は汚れている、その指に再び白い花を摘む覚悟はあるのか、君は足を揃えて黙って見つめる、雪の止んだ平野には足跡すらない渇きが、温もりで溶かしてしまえば啜れる滴りすら許されず、くちびるに知らぬ名だけを点火する
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