Xと書かれたジャムの小瓶/ただのみきや
胡桃の肉体が仄めかす
暗闇の膨らみの
血の残響に誘われて
月を覆うほどの錯視の群れが
歌う子宮を追い求め
少女の髪に咲くような
まろぶ光におぼれ死ぬ
裂かれた翼の間の道を
神の余韻が過ぎて行く
醸造されても蒸留されることのない
祈りに擬態した蛹から
滴る子供の姿態は
枕木を数えて脛を折り
埠頭の果てで行き場を失くす
重なり合う時の花びら
色を奪って夜へと消えた
白い帆船のような女の後姿
沈黙の深さを測ろうと身を投げた
男は透明度に復讐される
貝の中には初めからイミテーション
言葉には浮力があり過ぎた
目盛りを満たした後の
閉じた世
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