装うあなたの/霜天
 
春を装ってあなたの溶けていく先は自由落下する崖のような場所
僕らはそこへ向けて、手を振る
気の済むまで落ちてから
何事も無かったかのように泳ぎ出すあなたを
僕らはただ、手を振るだけ


いつの間にかの間違いを
部屋の隅から並べてみると
入りきらなかった
あなたの脱ぎ捨てた冬の衣装が
ここまで漂ってきていて
酷く寒い

気付いてみれば
暖める手段を忘れてしまっている
あなたは春に装って
南風の入り口で漂ってばかりで
降りてこない
忘れそうなことを
忘れることも出来なくて
酷く、寒い


あなたはその先で
僕らの靴の先を少しだけ、踏んでいるようで
あなたは春を、装いで
つまらないことを踏み越えるステップで
駆け抜けるように、落ちていく

自由落下
真似することも届かないくらいの
春を装って
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