ワールド・イズ・ユアーズ/星染
 
等しい、だからあなたは海なんだって 打ち上げられた貝殻に中身がないのは、夜が全部食べてしまうからなんだって あなたが息を引き取るまでの短い間に、刻んであげなければならない傷がたくさんあるから、もう一度、身体を寄せて、ずぶ濡れになっても、風邪がうつってもいいから 好き 嫌い、おはよう、おやすみ、さようなら 本当のお別れが来る前に、何度でも練習をしたい 生きていることを確かめるよりもずっと難しくて、やさしい手術
いま手のひらを重ねたときに、互いに伝わる脈拍が、あなたです わたしです わたしたちの絶望です 何もない世界でただけたたましく鳴るサイレンです 言葉を交わさなくてもわかることは、言葉にしてはいけないことだから、本当はわたしたちに、文学は要らなかった、それでも、あなたに突き立てる刃の先が、ガラスの外から差す光の粒をあつめて、瞬いていたこと 眩しさに目を細めたあなたの、閉じる前の睫毛が濡れていたこと 答えのない謎々、世界で一番静かな告白、唾液だけでは伝わらない、殺意に似た恋情、右手に握ったそれで 一突きで息の根をとめて
戻る   Point(3)