言葉/草野大悟2
 
ながい沈黙が饒舌をはらみ
言葉を産みおとすとき
海がきこえる。

海をついばむのは
歌を忘れて後ろの山にすてられた途端
歌いはじめたあの金糸雀でなければならない。 

瞬間という永遠があることも知らぬ
なみいる巨人が
ちいさな国に飛来して
あっという間に永遠を創った。

奴らは赤い。
赤くて青い。
だから、だから緑をよぶんだよ。
交合して黒になるつもりでね。
永遠を黒く塗るつもりで
緑をよぶんだ。

そこでは
ほろほろ熱い氷の涙を貼り付けた雲が
忘れることを忘れたころに
欠伸が緊張と手を繋いでやって来る。
流れは留まることを前提に走っているし
時は過去を未来に変えることなど朝飯前だ。
さすらいが定住に焦がれるように
定住はさすらいに焦がれる。

あなたの羊水で
ときを濾してきたわたしという言葉が
顔をだし
ゆっくりと瞼をあけ
産声をあげて
乳をのむこともせずに
歩きはじめる。
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