雪 三好達治 引用/黒田康之
 
太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ。

次郎を眠らせ、次郎の屋根に雪ふりつむ。

しんしん

しんしんと

ふりやまぬ雪は

そのとき、

道子の屋根にも

春子の屋根にもふっていて、

静かな静かな雪のよるは

町の子、山の子の眠りとなる。

でも、その夜を彼は知らない。

ぼくはそれを、

ただ見ていただけだ。
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