至って不真面目/ただのみきや
まどろみ
種子は雷鳴を聞いた
意識の発芽前その核が
ひたすら芯へと引き寄せる
死に疑似した時間の中
最初に震動があった
そうして微かな熱
やがて忍び寄る水の気配
たった今目を覚ました感覚の全てに
種子から虹が立った
太陽が大地から贖った
水の精は風をまとい女神となって
やわらかな土を羽毛より軽い素足で渡る
種子は鳥の声を聞いた
樹々の影の舞踏はひんやり心地よく
陽炎の愛撫に産毛もこそばゆい
夢見心地で発芽を忘れた
光円錐
わたしたちが未来を変えることはない
現在から未来の変化を予測はできても検証はできない
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