こがね みどり いのち/木立 悟
 





椀に触れたことのないくちびる
樹液のにおいのくちびる
人を知らないくちびる
ひとりを生きてゆく手のひら


人の姿をした冬の
はじまりと終わりが並んで立ち
木々が途切れるところ
空と地が付くところ


冬にとどまる雨
冬の上の 上の雨
動かない光の手
ちりちりと降るかけら


暗くなり雨になり雪になり
暗くなり暗くなり朝がくる
地の空の星が消え
明るく誰もいない朝がくる


雪けむり 陽を覆い
目から香る 生死のにおい
金と緑と むらさきの文字
まぶしすぎて 読めない文字


遺跡の柱の陰から
背の高い言葉がのぞき込む
水に落ちる曇の音
踏まないように 夜へ向かう午後


時間の水彩が緑へ緑へ
そして金のぬかるみへ
常に周りを巡る川
行くあてもなく遡上するもの


手首の浜に打ち寄せる白
きさきさきさきさ 抱き寄せる音
月はななめ 波はななめ
金にめざめ 緑にねむる

















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